猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療について
不安を感じている飼い主さまへ
当院では、根拠に基づいた診療を行っています
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1. 猫伝染性腹膜炎(FIP)とはAbout FIP
最近聞かれるようになった「FIP」という病気。
この「猫伝染性腹膜炎(FIP)」は、猫に感染する「猫腸コロナウイルス(FECV)」が
体内で変異することによって発症すると考えられている病気です。
FECV自体は多くの猫が保有しているウイルスで、
通常は無症状、または軽い消化器症状のみで経過します。
しかし、一部の猫ではウイルスが体内で変異し、
全身に強い炎症を引き起こすFIPを発症することがあります。
発症には猫の免疫反応や体質、環境要因などが複雑に関与していると考えられています。
発症年齢・進行について
FIPは若い猫で発症することが多いとされていますが、年齢に関わらず発症する可能性があります。
発症後は元気や食欲の低下、発熱などの症状から始まり、比較的短期間で症状が進行することもある疾患です。
なぜ「命に関わる病気」と言われてきたのか
FIPは、これまで有効な治療法が限られていたことから、致死性の高い病気として認識されてきました。
現在では治療の選択肢が広がりつつありますが、慎重な診断と治療判断が必要な病気であることに変わりはありません。
FIPは「病気になって初めて知る」ケースが多い疾患です
FIPは一般的な認知度が高い病気とは言えず、譲渡や購入時に詳しい説明を受ける機会は多くありません。
そのため、飼い主さまが突然この病気と向き合うことになり、不安を感じられるケースも少なくありません。
FIPは、飼い主さまの責任によって起こる病気ではありません。
正しい情報をもとに、落ち着いて病気と向き合うことが大切です。
2. FIPの主な症状とタイプSymptoms & Types
FIPの症状は多岐にわたり、初期には他の病気と区別がつきにくいことも少なくありません。
また、症状の現れ方には個体差があり、必ずしもすべての症状が見られるわけではありません。
ここでは、FIPで比較的よく見られる症状や、代表的なタイプについてご紹介します。
1
共通して見られる初期症状
FIPの初期には、以下のようなはっきりしない体調変化が見られることがあります。
- 元気がなくなる
- 食欲が落ちる
- 体重が減ってきた
- 発熱が続く、または上がったり下がったりする
- じっとしている時間が増える
- 毛づやが悪くなる
これらの症状は、FIP以外の病気でも見られることが多く、
症状だけでFIPと判断することはできません。
2
ウェットタイプ
ウェットタイプは、
お腹や胸に液体(腹水・胸水)がたまることが特徴とされるタイプです。
- お腹が膨らんで見える
- 呼吸が苦しそうになる
- 動きたがらなくなる
- 体重は減っているのに、お腹だけが大きくなる
- 元気・食欲の低下が進行する
比較的症状の進行が分かりやすい一方で、急速に状態が悪化することもあります。
3
ドライタイプ
ドライタイプでは、
はっきりとした腹水が見られない代わりに、さまざまな部位に炎症が起こります。
- 歩き方がふらつく
- うまくジャンプできなくなる
- けいれんや異常な動きが見られる
- 目の濁りや充血
- 視力の低下が疑われる
症状が徐々に進行することも多く、
気づくまでに時間がかかるケースもあります。
症状だけで判断せず、総合的な評価が大切です
FIPは、症状の現れ方が非常に多様な病気です。
そのため特定の症状があるからといって、FIPと断定することはできません。
気になる症状が見られた場合には、
早めに動物病院で相談し、症状や検査結果を総合的に評価することが重要です。
3. FIP治療の考え方 ― 以前と現在Treatment: Then & Now
かつてのFIP治療の限界
FIPは長年にわたり、有効な治療法がほとんどない病気とされてきました。
治療は主に、発熱や炎症を抑えるなどの対症療法が中心で、病気そのものの進行を十分に止めることは困難でした。
そのため、FIPは「命に関わる病気」「致死性の高い病気」として認識されてきました。
現在、治療の選択肢が広がってきている背景
近年、FIPに対する抗ウイルス薬の研究や治療報告が積み重ねられ、治療の選択肢が広がりつつあります。
これにより、FIPは「治療が検討できる病気」として、あらためて評価されるようになってきました。
ただし、これらの治療は科学的な根拠に基づいた投与設計と、慎重な経過観察が不可欠であり、安易な使用が推奨されるものではありません。
一方で、適切な診断と正しい治療方針のもとで治療を行った場合、寛解が得られるケースも報告されています。
そのため当院では、オーナー様への十分な説明と同意のもとで治療方針を決定しています。
※参考サイト:International Cat Care

4. 当院におけるFIP治療の基本方針Our Policy
FIPは、診断や治療の判断が簡単な病気ではありません。
そのため当院では、一つひとつのステップを丁寧に進めることを大切にしています。
診断の進め方について
当院では、以下の点を総合的に評価しながら診断を進めます。
- 症状の経過や全身状態
- 血液検査や画像検査などの検査結果
- 他の疾患の可能性
必要に応じて検査を追加し、段階的に判断することを基本としています。
治療適応の判断について
FIPと診断された場合でも、すべての猫に同じ治療を行うわけではありません。
病状の進行度やタイプ、体調などを踏まえ、
その猫にとって治療を行うことが適切かどうかを慎重に判断します。
治療の可否や見通しについては、
メリットだけでなく、考えられるリスクについてもお伝えしたうえでご相談します。
治療開始前に必ず行う説明
治療を開始する前には、必ず以下の点についてご説明します。
- 現時点で考えられる診断と病状
- 治療方針と治療期間の目安
- 期待される効果と限界
- 治療中に必要となる通院や検査
ご理解・ご同意をいただいたうえで、治療を進めていきます。
治療の流れ
治療中は、状態の変化を確認しながら、必要に応じて治療内容の見直しを行います。
当院でFIP治療に使用する薬剤は、各種論文などで推奨されるイギリスのBOVA社から正規の方法で輸入・購入されたものを使用しています。
- 使用薬剤の出所が明確であること
- 品質や管理体制が確認できること
- 治療に対する責任の所在が明確であること
出所不明の薬剤や、品質・安全性が確認できないものは使用していません。
これは、安心・安全な治療を行うための重要な方針です。
※参考サイト:BOVA社

当院では、経験や勘だけに頼るのではなく、
国際的な獣医学的知見や治療報告を参考にした診察を行っています。
- 科学的根拠に基づく判断
- 定期的な経過観察と評価
- 状態に応じた治療方針の調整
これらを通じて、できる限り適切な治療を目指します。
※参考サイト:PubMed

治療費についての考え方
FIP治療は、使用する薬剤や検査、通院回数などにより、治療費が高額になりやすい傾向があります。
当院では、
- 治療開始前の十分な説明
- 費用についての事前共有
- ご同意を得たうえでの治療開始
を大切にしています。
「高い=不透明」ではなく、内容を明確にしたうえでの適正な診療を行っています。
5. ご相談についてContact Us
FIPに関するご相談は、横尾動物病院までお電話にてお問い合わせください。
- 現在の症状や経過
- これまでに受けた検査や診断
- ご不安な点やご相談内容
を簡単にお伺いしたうえで、ご案内いたします。
